カリフォルニアで夢に挑む日本人女性醸造家・平林園枝

カリフォルニアで夢に挑む日本人女性醸造家・平林園枝
『SIX CROVES WINES』

ニューヨークで商社勤務のキャリアを積んでいたときにワインの魅力に惹かれ、醸造家の道を志した平林園枝さんが2018年にカリフォルニアで設立した『SIX CLOVES WINES』がwa-syuに登場!

カリフォルニアで夢に挑む日本人女性醸造家・平林園枝

平林さんの来日のタイミングで取材が実現!生い立ちからワインメーカーになるまでのお話や、これからワインメーカーを目指す方へのメッセージをいただきました。wa-syuディレクター・菊地との対談形式でご紹介します!

菊地: 平林さんは長野県のご出身とのことですが、どのあたりですか?
平林:長野県の大町市という、黒部ダムがあるところですね。私の祖父の生まれなんですが、そちらが実家になりまして。
菊地:おじいさん、おばあさんも一緒に住まれていたんですね。
平林:そうですね。実家の商売は2つありまして。祖母は造り酒屋(酒を醸造して売る店。醸造元)出身で、小さいときから酵母は身近な存在でした。私の曾お祖父ちゃんが町の町長さんで当時は稲作しかなかった農業をもう少し展開していこうということで、一説にはアメリカのワシントン州から入れたリンゴの苗木を長野で広めようということで当時町長だった私の曾お祖父ちゃんが自分のところでということでリンゴ農家になりました。
菊地: 稼業を継ごうとは思わなかったのですか?
平林:なかったですね。どちらかというと自分の性格からして外向きの人間でしたし、アメリカに行きたいと思っていました。
菊地:そうだったんですね。アメリカに興味を持たれたきっかけは?
平林:とりあえず英語の勉強がすごく好きだったので、ユニバーサルなツールを通して色んな文化に触れたいというのが目的だったのでアメリカである必要はなかったんですよね。たまたま高校卒業したあたりにハワイに留学させてもらってそれ以来ですね。
菊地:それからずっと海外に?
平林:そうですね。いったん日本には帰って来たんですけれども、その後アメリカに移りまして。ニューヨークの日本商社で働いていました。
菊地:そこでワインに興味を持つことになったんですよね。きっかけは何だったんですが?
平林: ニューヨークで生活していた頃、有名なオークションのワインショップ「Zachys(ザッキーズ)」に足を運ぶようになったのがきっかけです。週末に通っていたらどんどんはまっていって。これは面白いかもしれないと。私が小さい頃からフレーバー遊びが好きだったのもあったのでしょうね。
菊地:フレーバー遊び??
平林:小さい頃から香りや味の変化を楽しんでいて、例えばカレーにコーヒーやケチャップを入れてみたり、アイスクリームを作るときにバニラを加えたり、レモンの皮をすりおろして入れたりしていました。料理が大好きで、祖母にエプロンを買ってもらい、5歳くらいから包丁も使い台所に立っていたそうです。ワイン造りでも大切なのは、やっぱり味覚と嗅覚の鋭さで、中身を嗅ぎ分ける力が必要になってきます。幸いにもそれがもともと自分の中に自然と備わっていた感覚だったんですよね。それがワインとの出会いでピタッとハマって、「自分の持っているスキルを最大限に活かせる仕事かもしれない」と思ったんです。

カリフォルニアで夢に挑む日本人女性醸造家・平林園枝

菊地: そこから本格的にワインの勉強を始められたんですね。
平林: はい。その時は公認会計士になろうと思って学校に行きだしたところでした。当時は監査の仕事をしていたのですが、ふと思ったんです。自分が造っていないものを批判するという職業が自分にとって正しいのか、喜びになるのか、と。その時にワインのお仕事は自分で造り出してお届けするっていう、ものづくりの家に生まれたルーツを活かせる一番のキャリアだと思ってしまったんです。カリフォルニア大学デイヴィス校に醸造学科があるということで転籍しました。
菊地:そのデイヴィス校に行かれたのはどれくらいの期間だったのですか?
平林:私は理系のバックグラウンドがなかったので4年間です。サイエンス系の学位を持ってらっしゃる方だと2年ですが、私はワインの化学、ワインケミストリーを勉強するために最初の2年間は基礎学習。同時に英語も勉強しながら。
菊地:すごいですね…!
平林:はい、やりましたね。そのあと2年間で実際の栽培や醸造を学びました。畑に行ってた当時一番面白かったのは農作業。摘果と剪定ですね。あとはAmpelography(アンペログラフィー)という、葉っぱの形や色合いだけで種類を判断するのですが、その授業がすごかったですね。授業が終わったら畑に行って復習して。先生がちゃんとタグをつけてくれているので、40種類くらい覚えるんです。それで覚えた後に全く種類のわからない畑に行って練習するんですよ。卒業試験が30分くらいで、40種類を全部当てないといけないんです。マラソンのようでしたね…走りまくりました。
菊地:確かに畑の中も結構距離もありますしね…。
平林:はい。そんなことをこなして、4年間で卒業になりました。3年目からとんでもない勢いで毎日勉強して。他の人より歳もとっていましたし、日本人なので言語的にも難しいので普通の生徒の3倍勉強しました。
菊地:そうですよね、ものすごい時間かかりますよね…。 卒業後はどのようなご経験を?
平林: ワイン造りの幅を広げるため、ニュージーランド、カリフォルニア、チリのワイナリーなど、様々な産地で研修しました。それぞれの土地で異なる技術や哲学を学びましたね。

wa-syu菊地とシックスクローブス平林さん

菊地: お伺いしたいことがまだまだ沢山あり過ぎるのですが…!平林さんに憧れる方は多いと思うんです。海外でも日本でも、これからワインメーカーになりたいと思っている方にメッセージをいただけたらと思いまして。
平林:あの…醸造の仕事は本当にきついです。皆さんセクシーな仕事なんでしょって言われるんですけど、とんでもない。汚いし怖いし危険だし。女性にはとても不利な仕事ですね。
菊地:それはやっぱり力が…。
平林:力が無いからですね。なんですが、ワインを造るプロセスを究極のものだと思ってるんですね。我々は特に畑を持ってらっしゃる生産者の方はずっと通年育て、そしてワインに仕上げ、仕上げたあとも責任を持って皆さんにお届けしていかなきゃいけない。これは一年に一回しかないので自分の今後のポリシーとかやり方とかを確固としてもって臨んで一分一秒でも無駄にしないっていう姿勢がないと素晴らしいものって出来ないですよね。なんですが、できる限りを尽くすと、必ずそのリターンがあります。それと、私の師匠のテッド・レモン(リトライワイン栽培醸造家)から学んだことは、自分の造りたいもののイメージや、あるべき姿っていうのを先に描ける、強い意志が必要だということです。それに派生する技術、そして忍耐力。多分一番必要なのはネットワーク。私はあまりないんですけどね。職人は皆一人でやるのが好きですから。とにかく自分で目に見えないものを手探りで、何年も経った後じゃないとどんな仕上がりになるかもわからないものを造っていくっていうのは、すごくきついことです。それを皆さんしっかりと肝に銘じて美味しいものを造っていただきたいですね。
菊地:すごいメッセージをありがとうございます。ちょっと今この音声そのものをお届けしたいぐらい。
平林:きついですよ、ワインメイキングは。アメリカで造ると特に大変です。

カリフォルニアで夢に挑む日本人女性醸造家・平林園枝

菊地:今後の夢とかありますか?次の目標というか。
平林:かなりこれもこちらの方のプロセスになるんですけど、今のワインの業界って日本もそうだと思うんですけど混沌としていると思うんですよね。いろんなスタイルがありすぎる。私のキャリアの中ではあまり話はしないんですけども、アメリカのとんでもなく商業的なワインを造るワイナリーでも働いたことがありまして。で、形としてはワインは出来上がるんだけれども、今はアメリカでも同じで、お酒離れが進んでいるんですね。
菊地:低アルコールにいったりとか。ノンアルコールとか。
平林:そうそう、ですよね。あれって時代の流れとして当然で当たり前の流れで、特にアメリカの場合は禁酒法が施行された唯一の国じゃないですか。カナダもそうですけど。それはやっぱり宗教的な意味合いとか、社会的な問題とか、それをやっぱり排除するためにやらなければいけないっていう時代があったので。それはやっぱりある意味で今、第二次禁酒ブームみたいな感じなんですよ。その中、本当にワインを飲みたい、ワインを通して人と触れ合いたい、 ワインが人と繋げる媒体であるっていうのを皆さんに我々生産者としてお伝えしていく義務があると思うんです。そういう意味では、まず生産量を増やすっていうのが1つ目標で、もう1つはあんまり宗教的なことは言いたくはないですが、ワインを通して今後食生活であり、いろんなところで我々がやっていくべきことっていうのも皆さんにお伝えしていきたいなと思いますね。 お話していなかったのですが、私はグルテン不耐症で小麦のものが食べられないんですよ。農薬の影響など、啓蒙的ではないですけどオーガニックを使っている意味というのを伝えていきたいなと思っています。
菊地: ありがとうございます。皆こういう話も聞きたいと思いますので、これから私たちもそういう場をつくっていきたいと思いますね。今日みたいな。本日は本当に素晴らしいお話をありがとうございました!また平林さんが来日されるタイミングでイベントをできればと思いますのでよろしくお願いします!
平林:楽しみにしています、ありがとうございます。

 

シックスクローブス

wa-syuより4銘柄リリース!『SIX CLOVES WINES』

『SIX CLOVES WINES』は、日本ワインではありませんが、日本人醸造家として日本の感性を世界に向けて表現されていることに共鳴し、日本ワインに特化したwa-syuでもお取り扱いをスタートしました。
平林さんは、カリフォルニア大学デービス校で醸造学を学び、ナパ、ニュージーランド、チリのワイナリーで醸造経験を積みました。
醸造家を目指した当時、主流だった合理的かつ商業的なカリフォルニアのワイン醸造のスタイルに疑問を感じていた平林さんは、さまざまな経験を重ねる中で、「健全に育てられたブドウを使い、必要のないものを省いて丁寧に作り上げられたワインには本来持っているポテンシャルがしっかりと発揮され、飲み手に我々作り手の気持ちを伝えてくれる力がある」という考えに辿り着きました。
ブドウの持つ本来の個性とポテンシャルを存分に生かしたワイン造りを常に心がけ、他にはない独自性に富んだワインを多くの飲み手に伝えていく信念と哲学を持って、ワイン造りをおこなっています。
果実味豊かで体にすっと入ってくる滋味深いワインたちは、日本の食とも相性抜群!素材本来の魅力を活かした料理ならジャンルを問わずよく合いますので、ぜひ食とのペアリングをお楽しみください。

2025年3月16日(日)、カリフォルニアから来日予定の平林さんをスペシャルゲストにお迎えして「SIX CLOVES WINES」メーカーズイベントを開催!
イベント詳細はこちら >> https://wa-syu.com/blogs/info/sixcloveswines_kafuka_20250316

写真左から:
ALDER SPRINGS VINEYARD PINOT NOIR(アルダー・スプリングス・ヴィンヤード ピノ・ノワール) 2021/12,100yen(税込)
BUF-WEHR RANCH RUSSIAN RIVER VALLEY PINOT NOIR(バフ・ヴェール・ランチ ピノ・ノワール) 2022/16,500yen(税込)
ALDER SPRINGS VINEYARD CHARDONNAY(アルダー・スプリングス・ヴィンヤード シャルドネ) 2021/11,000yen(税込)
LINDA VISTA VINEYARD CHARDONNAY(リンダ・ヴィスタ・ヴィンヤード シャルドネ) 2022/13,200yen(税込)

SIX CLOVES WINES/アメリカ合衆国:シックス・クローヴズ・ワインズ

SIX CLOVES WINES(シックス・クローヴズ・ワインズ)は、アメリカ・カリフォルニアで日本人女性醸造家、平林園枝(ひらばやしそのえ)氏が手がけるワインブランド。祖父の実家が味噌醤油問屋、祖母が造り酒屋の生まれで、幼少期から発酵というものに親しんで育った平林氏。成人後、ニューヨークで商社勤務のキャリアを積んでいた時にワインの魅力に惹かれ、醸造家の道を志すことに。カリフォルニア大学デービス校で醸造学を学び、ナパ、ニュージーランド、チリのワイナリーで経験を積んだ後、2018年にシックス・ クローヴズ・ワインズを設立しました。

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